【ネタバレ】パシフィック・リム アップライジング 感想

パシリムアップラ感想

鑑賞日:4/14

吹替・4DX

 

 

 

 

 

なんでマコ殺した。

 

弟と2人で夜道に語り合ったけど、まさかよりにもよって「パシフィック・リム」の感想合戦で「『よかった探し』をしよう」なんて言葉を使うとは思わなかった。クソ映画レビューの名言だぜコレ。


映像はいい、設定補完もまあまあいい。だけど前作で良かったところを崩してるんだからパシリムとしては最悪。

 

キャラを殺すなと言ってるんじゃない。
前作でもパイロットがバンバン死んでたからね。
それに設定だけでも、前作内における最新型第五世代のストライカー・エウレカを含め、残存する機体はたったの4機だったことが『これは戦争で人死にが出る』ことを描写していた。
でも今回はあまりにもそれに頼り過ぎてた。顕著なのが前作のヒロインにして主人公だったマコの死。
彼女が前作でどういう描かれ方をしていたかというと、両親を怪獣に殺され復讐心を持ちながらもペントコスト司令官に救われた時の純真な心も持ち合わせていた女性だ。
もう一人の主人公であるローリーと共にジプシー・デンジャーに乗り込むも、その復讐心に足を取られて一度は失敗をする。それでも香港の街で二体の怪獣を相手取りけじめをつけ、裂け目においても最後まで戦い抜いたパイロット。ラストシーンでは心を通わせたローリーと幸せそうに額を合わせながら平和になった海の上で笑っていた。
それがコレだ。なんだコレ?
わざわざマコを殺す意味はあったか?マコが遺したデータもそれは「マコが遺す」という点に意義があったか?
視点を変えて「ジェイクの未熟さを表すためだった(手が届かなかった)」ことを表すためだとしても、それではアフターフォローが足りなさすぎる。マコが死ぬことに対する重みを何ら回収できちゃいない。彼女があの世界から存在ごといなくなるってことは、"前作のハッピーエンドを台無しにする"ことだ。よりにもよって、そこで終われたはずの作品を続けてやる意味は全くない。悪趣味だ。
「ローリーはどこ行った!」ってずっと(心の中で)叫ばせないで欲しかった。前作のポスターやサントラのジャケを見てみろよ、いるのはジプシーとローリーとマコだぜ。彼女だって主人公なんだよ、それがどうしたこの仕打ち。
もしかしたらそのローリーが出演できないことが(向こうですごく売れてるって聞いた)キッカケなのかもしれないけど、それならそれでマコの扱いを考えて欲しかった(こっちの特撮にも俳優が売れてスケジュールが取れなくなり客演が難しくなるのはよくあることです)。COパイがいなくてマコがドリフト出来ないなら、途中で死ぬ司令の代わりにマコが指揮を執る後方支援型でも何ら問題はなかった筈でしょう?量産機配備の如何にマコの立場が絡んでいたのは事実だけれども、それだって別にマコが死ぬまでの必要もなく、「量産機配備をマコは承認側に回った。そして量産機が暴走しマコは知らなかったと言えどそれを受け入れてしまったことの重みを背負う」方が現状よりもマシだった。

何よりパシリムは王道で、前作主人公がサポートに回るのは王道作品にもよくある燃える展開だと思うのだけど、それを振り切ったなり、或いは思い付かなかったなり、どちらにせよ最悪の結果を作ってしまったと言わざるを得ない。


加えてニュートの悪役化。
誰も望んじゃいなかったよこんなの。
そもそも「パシフィック・リム」は前作序盤で語られる通り、各国が協力し合い世界の敵に立ち向かうということがテーマだった。ロボットだってアメリカ・オーストラリア・ロシア・中国と分かれていた。
その横で、気が合わずお互いに反発し合う博士二人が、戦いの危機に協力し合う。パイロットが主役なのに対し「手を取り合うのはパイロットだけじゃない」と表すのが彼らの役割で、またその結果が次元の裂け目のシステムの一部を暴く事となり、裂け目崩壊成功に繋がる──熱い展開の要だった。
それがどうしてこうなった。どうもクソもねえよなんだコレ?聞きたいわ。監督だか脚本だかスポンサーだかもしくは他の誰かは知らないけど、よくもまあここまで最低の続編を作ろうって発案できたと思うよ。その度胸だけは買うよ。そしてそれを通した連中もだ。クソッタレ。
なんでニュートが悪役ムーブする羽目になってんのか全然理解できない。異次元人に乗っ取られた?へえそう。アリスを介して乗っ取られたの。ええ。そのアリスと名付けてる怪獣の脳はどこから来たの?残存する脳は無かったはずだが。ええ。もうめちゃくちゃだよ。クソ。「制作が思うルートにキャラクターを当てはめた」としか思えない。彼にオタク気質なところはあるけれども(というかそのもの怪獣オタクだ)そこまでマッドだったかといえばそうじゃなく、なんでこうしたのか理解できない。

デルトロ監督の案にはニュートが続編で悪役になることがあったらしいけど、仮にデルトロが同じくニュートを悪側として描く映画を撮っていても私はその点をクソだと言ったと思う。

前作を歓迎した人間にそれを受け入れろというのは酷だろう。

 


そして全体的にあまりにも描写不足。
ぶっちゃけインパクトがない。
前作でのキャラクターを平気で殺したりする割には、前作で語られたものを「既に観客が知っているもの」として進める。その癖、前作からの踏襲や或いは対比を多用する。だけどそれを愛と受け止めるにはやってる事が酷い。
キャラの描写が薄い。イェーガーの細かい描写がない。怪獣の能力でさえほとんど描かれない。
マコが遺したデータのあの場所は何を意味していたのか?マコは何故あの場所がわかったのか?偽ジプシーはどこにいたのか?ジプシー以外のイェーガー3機の元々のパイロットはどんな人だったのか?あの基地にはどんな人達がいてどんな働きをしていたのか?イェーガーの整備はどうしてたのか?ニュートはどうやって怪獣を量産機の中に忍び込ませていたのか?その培養する怪獣はどこでどうやっていたのか?
説明してほしい要素が多すぎるし、圧倒的に薄い。

 

私が思うところ、前作が評価されたのは徹底的に「好き」を拘ったからだと思う。襲い来る怪獣!かっこいいロボット!ドカーン!ドーン!パーンチ!そういうものに、そういうものが最高に映える画・話・流れを作り上げた。

前作にだって粗はあった。だけどもそれは作品を作る上で発生せざるを得ない粗であり、趣味を突き抜けた作品だからこそ許されていた。「好き!」って気持ちをどんどん加速させていく映画だったから気に留めるどころか、笑って「まあそういうのもあるよね」って済ませられるレベルだった。
でも今作はそれがない。ロボット好きなんだろうなっていうのは伝わって来るけど、そのロボット描写でさえ前作よりは大分薄れた。
今作におけるマコポジションであるアマナが序盤にイェーガー四機について軽く説明してくれるけど、それだけ。
やれ無人機が〜〜整備が〜〜って話すよりも「関節にはエンジン40基だ」って言葉の方が作品には重く、そこが評価されていたのに何も分かっちゃいない。水中に潜る時は隙間を閉じたりだとか、そういう「このロボットはこういうものが積み重なって動いている」っていう絵面もほとんどない。アクロバティックなカメラワークでイェーガー整備シーンを映されるよりも、「誘導シナプス」等の台詞が積み重なっている状態で、溶接の火花を散らしながらジプシーの胸部装甲を取り外すワンシーンの方が美しくて説得力があるんだよ。分からないかなあ。分からなかったんだなあ。 ちくしょう。
最後の東京決戦に至るまでジプシーと偽ジプシー以外の機体が動く描写もほとんどないから、機体の特徴もほとんどその時まで分からずじまい。唯一確認できたのは暗く基地襲撃されてる最中での鉄球ぐらいなもんだ。

前作だって(回想のみのコヨーテ・タンゴ等は例外として)クリムゾン・タイフーンとチェルノ・アルファは戦闘開始後すぐにやられてしまったけど、きちんと戦闘フォームを見せ、操縦している人物性や操縦場面がきちんと理解できるように作られてあった。
程よいアニメ感があるキャラ造形(ビジュアル)で、台詞が少なくとも彼らがどういう戦い方をしてきたのかすぐに理解できた。だからそのベテランの彼らが瞬殺されてしまうことが、話の絶望感に繋がった。
上がいなくなって候補生たちがイェーガーに乗り込む展開も、その「元いたパイロット」が見えないんだからただのラッキーぐらいにしか感じられない。

ポッと降って湧いたような(序盤以降語られることのなかった)イェーガーと、面子の数は前作のパイロット並みなのにアマナ・ロシア娘・真剣佑・おっぱい弄り以外に特徴を掴むことも難しい候補生たち。そのうち一人は死んでしまうけれども、彼らのうち誰がどの機体に乗ったかなんていうのもすぐに判別しづらいからもう何が何だか分からない。

 

建設していた壁も10年程度じゃ取っ払われているはずがないのに、姿形も見えない。あるはずのところに壁の気配がまるでない。前作から続投してきたのはクソみたいな扱いのキャラと、イェーガーと怪獣の設定だけ。
そもそも前作のアナログが割合残る世界観から一変して近未来的になった事でさえ、「10年の復興」として受け止められない。何故なら描写が圧倒的に薄いからだ。「ああこれがこうなったんだな」って歴史の積み重なりを描写してトンデモ世界観に納得させるのがパシリムだったのに、そこを省いてるからだ。前作で評価されたことをガンスルー決め込むとかすげーよ逆に。制作スタッフの見てるパシフィック・リムは一体何だったんですか?

 

最終決戦だって「これで終わり?」って思った。あっ富士山で戦わないんだ!もうそこで負け覚悟で機体を決死させちゃうんだ!
前作は前作はって言いたかないけどさ、その判断が突飛すぎない?
前作でジプシーが決死したのは、そこまでに他の機体が脱落していって、ジプシー自体も損傷率80%で足を引きずって行かなくちゃならなくて、最後に自爆という形じゃなきゃ裂け目を崩壊させるエネルギーを作れなかったからだよ。それ以外に方法がない状態だった。
今回はもう「勝てねえからやけっぱち!」以外の面がまるで見えなかった。怪獣とも思う存分戦わないからさあ。怪獣の能力描写も無いしね!唯一あったのって「衝撃を吸収する」ってとこだけでしょ?だから薄い。イェーガー描写と合わせて薄い。イェーガーが難敵を色んな機能や武装で殴って殴って倒すのがカタルシスだったのに、結局イェーガーが立って怪獣へ勝ち星与えたのゼロだよ?観客舐めんな。タンカーぶん回したりとか、コンテナ両手で掴んで怪獣の顔を両側からサンドしたりとか、そういうバーリトゥード戦闘が観たかったのであってさあ、武器ブンブン振り回してビル薙ぎ倒してその内に怪獣が超巨大化して──なんて展開をそのまま見せないで。怪獣を前にした絶望感や力の差すらもロクに分からないままに富士山決死の流れになるからなんかもうほんと、映像が綺麗なのはいいけどインパクトに欠ける。だからパシリム感が薄い。


今作は「大衆向け」になったけど、私が好きなパシフィックリムは「マニア向け」の映画だ。
続編名乗るならそこを分かって欲しかった。前作から離れるとしても前作を大切にして欲しかった。
昼戦を増やしたりとか色々しても結局は「だけど……」ってマイナス評価を軽減することにしかならない映画なんて作って欲しくなかった。
こっちだって評価したいわ。

シャオ社長の無人機関連がスクラッパーと共に回収されるところとかそこは素直に感心したよ。最初は敵かと思われたシャオ産業が合流するところとかも良かったよ。セイバー・アテナの剣が2本から1本になるのとか、なんで3人乗りのイェーガーがまだあるのかと思ったら一人が腹部の機銃を操作して実質クリムゾン・タイフーンの改善案兼リスペクトとかさ、評価したいわ。でもそこを評価しても「だけど……」って不満点列挙しなきゃいけないのこの映画。そんなのパシフィック・リムに求めてなかったんだよ。 
マコとニュートの役割を別な新キャラに任せる方向性で行けなかったのかなあ。ニュートはシャオ産業から、ハーマンは防衛チームからとして合流して一緒に倒す流れにさあ。ハーマンの「理論上可能だ」って台詞に「でも理論を立てるのが君の役割だろ?」ってニュートが茶化して彼がやる気になる──って展開の方が前作と地続きになった感じがするじゃない、ていうかファンが「こうであって欲しかった」と望む展開の方が"らしい"なんてあっちゃいけないことでしょ。

 

次回作では異次元に攻め込む気満々らしいけど、個人的にはここでシリーズが切られることを望みます。
それかもしくは名を変えてやってほしい。パシフィックリムはサブタイとかにしちゃえよ、そうしたらほら、見る側としては察せられるから。

 

「これはパシリムの続編だから期待が高く残念だけれども贔屓目を抜けば凡作である」みたいな評価をチラホラ見るし、むしろ歓迎する声も耳にする(目にする)けれども、私としてはそこに補強したい。

 

名作の続編が凡作に成り下がったらそれだけでもう裏切り行為だと思う。

 

デルトロのパシリムが観たかった。
こんなの観たくなかった。

アヴィケブロンさんの種火集めしてたかった2時間でした。
もう2度と観ない。

 

 

 

ジュラシック・ワールド〜炎の王国〜 は監督が安心と安定のスピルバーグなので期待してますね!!!!!